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「災害時BRT」の提案と実現


メディアのニュースに出始めましたので,行政に提案していた,公共交通の定時性確保のウルトラC施策,「災害時BRT」の詳細を少しお話しします.

 

 

【中国新聞】広島呉道路でバス運行 17日から

http://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=448329&comment_sub_id=0&category_id=256

 

【広島県庁】7月17日から呉~広島間の交通アクセスが改善

呉~広島間の通勤・通学対策について【地域力創造課】 (PDFファイル)(292KB)

https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/319238.pdf

 

 

呉→広島への交通,特に通勤交通(公共交通)をどうするかが大きな問題となっています.JR呉線+広島呉道路が潰れてしまっている現在,自動車か船の2択です.

呉市から広島市に通勤・通学人数は,交通手段別の人数がわかるH22年の国勢調査によると約11,000人(呉→広島方向のみ).

そのうち自動車と鉄道の比率がほぼ1:1,つまり約5,400人が鉄道通勤です.(バスを入れると6,300人)

 ※少し古い国勢調査の値なので注意.交通手段がわかるデータの最新はH22年調査.

 

この人数が車に転換するととんでもないこととなります.大渋滞の発生.

バスは道路を走るので,どうしても渋滞に巻き込まれてしまいます.

現在は広島呉道路が災害通行止,並行する国道31号のみが通行可能で,通勤時間帯に大渋滞が発生してしまいました.3時間を要した,という声も.

先週一週間は,輸送時間の変動が少ない船が鉄道の代替としての役割を担いましたが,安全上の問題(定員)とそもそも活用できる船がそう簡単に手配できるわけでもなく,輸送力に限りがあります.

 

 

これはなんとかせねば,といろいろ考えていたのですが,そこで着想したのが,「災害時BRT」.

 

バスを災害救援車両扱いとして広島呉道路を通行できるようにします.BRTとは,Bus Rapid Transitの略で,簡単にいうとバスの運行サービスを高度化するシステムで,バス専用自動車道がその一例であります.例えば東日本大震災で被災したJR線は,鉄道の軌道をバス専用の車道に再整備し,バス専用自動車道として運用されています.この方式の最大のメリットは,渋滞に巻き込まれないことです.高速道路でそのように扱う事例は,熊本地震など事例があります.

 

ただし,今回の災害ではこれが一筋縄にはいきません.何故かというと,広島呉道路の被災状況.現在仁保JCTから坂北ICまでは通行止が解除されていますが,坂北IC(厳密には坂南IC)〜天応西ICは,水尻地区の大幅土砂災害で復旧には相当時間がかかりそうです.そして呉IC〜天応東IC間は本線は生きていますが,天応地区は土砂災害の被害が大きく,ICから流出後は国道31号にでることができません.

天応東ICの少し北側に天応西ICがあるのですが,こちらは広島方面専用のIC.ハーフICという形式で出入りの方向が限られており,呉方向からの出入りはできません.

 

ここで,常識をうちやぶる発想を.

現在,一般車は広島呉道路を走行できないので,呉からは天応西ICで本線上でUターン(災害通行止なので,厳密にはUターンという言葉が当てはまらないかもしれませんが,動きとしては「転回」です)して,生きている広島方向からの出口を使えば,呉道路から国道31号に接続できるのでは?この接続道路は半分ぐらいが高架構造なので,接続道路の被害はすくないはず.

そんな着想を13日に着想し,呉市,国土交通省に提案.「検討の余地あり」とのこと.その後は広島県や警察,NEXCO,バス事業者との調整が進み,今晩(15日夜)に,概要が発表されるに至りました.

 

国道31号は,坂北IC〜天応ICは結構な区間が片側二車線区間で,まだ渋滞は比較的軽微であり,

この「災害時BRT」では,渋滞のひどい区間を避けることができるので,定時制はぐっと向上すると思います.

詳細は明日16日に発表になる予定です.

 

この提案の際,この方式は「災害時BRT」方式という名称を使ってくれと,行政機関に提案しています.ここで初めて定義した言葉です.

なんじゃこれ?という関心が一般から抱かれそうなことで,バスが便利だというのが伝わって,渋滞緩和にもつながればいいな,とか(MM:モビリティ・マネジメントの視点から),また,今後同様の災害が発生した際,パッとだれかが思い出して適用してくれたらいいな,という,「タグ付け」のような企図もあります.どうやったらわかりやすいか,関心を得やすいかという観点で,名前をつけました.

これで定時性が確保されれば,バスの運用も効率化するため,結果として輸送力アップにつながります.

 

着想後,2日で道筋が立ち,翌営業日には実現です.

アイデアを聞いてくださり,実現してくださった行政機関,警察の皆様,バス事業者の皆様,その他各団体の皆様に感謝申し上げます.これで少しでも地域の方々のモビリティの改善につながればと思います.ただしこの先も検討すべき,解決すべき課題は多数あります.引き続き動ける限りで動いて参ります.

 

このページの資料は,災害BRTについて提案した資料.災害時BRTという言葉が明日予定の詳細の発表ではボツになるかもしれませんが,

あらためて災害時BRTを以下のように定義したいと思います.

(※提案した資料から,定義を少し編集しています).

 

【災害時BRTとは】

 災害発生時等で,通行止となっている高速道路や自動車専用道等において,

 路線バス,高速バス等を緊急輸送車両として通行を認めるとともに,

 例えば本来であれば本線である道路空間上での転回を認めるなど,道路空間の柔軟な運用により

 バスの定時性や運行サービスを確保する方式.

 (7/15時点の小職定義.今後微修正をする可能性もあります)

 

 

お願い

 災害時BRTは,呉〜広島間の生活交通輸送の利便性確保を目的としています.

 今現在,まだ全然公共交通の供給が追いついていません.不足しています!

 見学や視察目的での乗車は,朝夕の満車が予想される時間帯は控えていただきたくお願い申し上げます.

 (空席がある場合は,逆に公共交通の増収につながるので,復興支援につながり,良いかなと思います)